アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は、アトピー素因(喘息・鼻炎・結膜炎・皮膚炎)に基づく慢性の湿疹です。表皮角質層のバリア機能をつかさどるフィラグリン遺伝子の異常が皮膚バリア機能を低下させ、アトピー性皮膚炎の原因となることが近年報告されています。
 症状は、乳幼児期・小児期~思春期・成人期の3期に大別され、年齢によって皮疹に特徴があります。また、一般的に季節によって悪化と改善を繰り返します。特に乾燥しやすい冬期や発汗が増える夏季に悪化する傾向があります。
 アトピー素因は遺伝傾向があり、ご両親のどちらかに上記の症状のいずれかがありますと、お子様もアトピー素因を引き継ぐ確率が高くなります。喘息・鼻炎・結膜炎・皮膚炎のどの症状が発症してくるかは個人差があります。
 アトピー性皮膚炎の患者様の大半は乳幼児期に発症し慢性の経過を辿りますが、9割方は思春期頃までに自然軽快します。残念ながら1割の患者様は成人期に移行します。
しかし、経験上50歳頃までにはほぼ全員自然軽快し、高齢者でのアトピー性皮膚炎は極めて稀です。また、近年は成人期になってから発症する方も増えています。
 当院では、日本皮膚科学会のガイドラインに基づいたステロイド外用療法をメインに治療、生活指導をします。いかがわしい民間療法は絶対にやってはならないことです。
一昔前、一部マスコミの誤った報道によりステロイドの副作用ばかりが強調されたステロイドバッシングが蔓延していました。もちろんステロイドにも副作用はありますが、それは全身内服薬(飲み薬)での話であり、皮膚科で使う局所外用薬(塗り薬)では殆ど副作用はありません。その僅かな副作用も皮膚萎縮・毛細血管拡張・皮膚感染症(ニキビ・水虫)程度であり、殆どが誤った使い方によるものです。強さのランク(very strong~mild)と部位(顔面か体幹四肢か)による使い分けを専門医の指導の元で正しい外用をすれば上記の副作用も殆ど生じることはありません。日本皮膚科学会では急性期(重度)にはステロイド外用を、安定期(維持期)には保湿剤をメインに予防するプロアクティブ療法が推奨されています。
 当院の院長はアトピー性皮膚炎の大家、向井秀樹先生(現東邦大学医療センター大橋病院皮膚科教授)が横浜労災病院在職時に直接御指導を受け、その直伝の技を自負しております。たかだか外用療法でもちょっとしたコツで効果が雲泥の差となります。
 アトピー性皮膚炎は、一朝一夕に完治する疾患ではありません。魔法のような治療は存在しません。病気を受け入れ、皮膚科専門医のアドバイスに従った治療をすれば、きっと良いQOL(生活の質)が得られますので共に頑張りましょう。